わざと貧血になるように人体は設計された!

 

『宇宙生物学で読み解く「人体」の秘密』(講談社現代新書)

「鉄をめぐる人体と病原菌との壮絶な闘い」より、抜粋 

 

・・・こうして人体はトランスフェリン、病原菌はシデロフォアと、それぞれ異なる武器を持って激しい鉄の争奪戦を繰り広げているわけです。

今、この瞬間にも、あなたの体内のそこらじゅうで、人体と病原菌との壮絶な戦いが繰り広げられているのです。

 

この戦いを有利に進めるため、人体はトランスフェリンに加えて、さらに捨て身ともいえる涙ぐましい作戦を遂行しています。

それが、体内の鉄分を減らすということなのです。

 

鉄が少ないというのは、人体の細胞にとってもツラいことです。

ただし、感染症にかかって死ぬよりは、はるかにマシです。

そこで、死なない程度に鉄を減らすことにしたわけです。

 

実は、女性に頻発している貧血もこうした目的に寄与していると考えられています。

女性は毎月、月経によって大量の血液を失います。

それとともにヘモグロビンの中に含まれている鉄分も捨ててしまうことになるので、結果として貧血になってしまいます。

 

こうした貧血は、貧血になってしまうという消極的なものではなく、実は、人体が意図的に、わざと貧血にしているということが最新の研究で分かってきました。

実は人体は、必要以上に鉄を取り込まないように、わざと吸収率を抑制するメカニズムを発達させたのです。

ドイツのアレキサンダー・クラウゼ博士らの研究によれば・・・

 

『宇宙生物学で読み解く「人体」の秘密』(講談社現代新書)

「鉄をめぐる人体と病原菌との壮絶な闘い」より、抜粋