周期表で読み解く原発事故


身体は、とりこむ要素を勘違いする


原発事故による内部被曝を防ぐため、どなたも、テレビ番組や新聞記事で以下のような話を一度は見聞きしたことがあるでしょう。


「セシウムを体内に蓄積させないためには、カリウムをとること」


「ストロンチウムを体内に蓄積させないためには、カルシウムをとること」


なぜ、このようなことが言えるのでしょうか。


周期表では、セシウムはカリウムと同じ列の2つ下、ストロンチウムはカルシウムの真下にあります。

この「同じ列の上下の位置にある」という関係が周期表を読み解く上での鍵でもあり、内部被曝を起こしやすい根本的な原因を示しています。

 


カリウムは、神経や筋肉の細胞を働かせるため、人体にとって不可欠な元素です。

ですから人体は、積極的に体内に取り込もうとします。

そのとき人体は、一番外側の電子の数が同じセシウムを、カリウムだと間違って体内に取り込んでしまうのです。


ただし、もともとカリウムを十分にとっていると、人体はこれ以上、カリウムは必要ないと判断し、あまり積極的には吸収しようとしなくなります。

だから、セシウムについても、間違って吸収してしまう量が少なくなってくれるのです。


ストロンチウムの場合も、これとまったく同じです。

やはり一番外側の電子の数が、上段にあるカルシウムと似ているので、カルシウムと勘違いして体内に取り込んでしまいます。

だから、ストロンチウムの吸収を防ぐためには、普段からカルシウムをタップリとっておくことが不可欠だというわけです。

 

では、早速、周期表を使って、以上を詳しく見て行きましょう。

まず、原子番号は55のセシウムですが・・・・

 

 

「元素周期表で世界はすべて読み解ける」(光文社新書)第1章より



元素周期表
吉田隆嘉

元素周期表で世界はすべて読み解ける 

 宇宙、地球、人体の成り立ち

 吉田たかよし著
2012年10月17日発売/光文社新書/定価777円


【内容紹介】

私たちの体、住んでいる地球、そして宇宙。この世に存在するすべてのものは、元素同士の化学反応によってできています。

これらの自然科学の摂理を凝縮した万能の道具が、周期表です。元素たちが並んだ周期表のルールは、複雑そうに見えて非常にシンプル。

「縦と横のどっちから攻める?」

「なぜ人体は取り込む栄養素を間違う?」

「元素の化学進化って何」――?

難しそうだけどなぜか気になる、周期表の仕組みが一からわかる入門書。

量子化学の基礎、内部被爆のメカニズム、レアアース、超新星爆発などの様々なキーワードも、周期表というアプローチから解き明かしていきましょう。

 


【目次】

第1章 周期表には何が書かれているか?

第2章 周期表から宇宙を読み解く

第3章 化学反応を繰り返す人体

第4章 私たちはなぜ、動くことができるのか

第5章 レアアアースははみ出し組ではない!

第6章 美しき気ガスと気体の世界

第7章 周期表からリスクと健康を見きわめる