アインシュタインは、相対性理論でノーベル賞をとれなかった!

 

世界は「ゆらぎ」でできている

~宇宙、素粒子、人体の本質~

(光文社新書)



アインシュタインは、相対性理論でノーベル賞をとれなかった!

 

(前略)・・・このようにアインシュタインは、ミクロの揺らぎが持つ不思議な性質を光量子仮説によってみごとに説明したのです。

 

ただし、光量子仮説の発見のおかげで、かろうじて面子を保ててほっとしただろうと噂されていた人たちがいます。


それは、当時のノーベル賞の選考委員たちです。

 


アインシュタインは20世紀で最も偉大な科学者だと言われているくらいですから、当然ノーベル賞を受賞しています。


しかし、彼が受賞したノーベル賞は、実は、この光量子仮説の業績に対して与えられたものであり、それよりもはるかに有名な相対性理論で受賞したわけではなかったのです。

 


これには、どうにもならない事情がありました。


相対性理論は、従来の物理学を根底から変えてしまうあまりにも革新的な理論だったので、頭のかたいノーベル賞の選考委員は、評価していいものかどうか自信が持てなかったのです。


とはいえ、世間では「相対性理論はすごい」と評判は沸騰する一方で、ノーベル賞を出さないというのはとても不自然な状況でした。


さらに、アインシュタインがユダヤ人だったため、そこに民族差別の問題が複雑にからみ、選考委員はすっかり追い詰められてしまっていたのです。

 


こうした窮地から脱するために、選考委員がとった苦肉の策が、安全策として光量子仮説に対してアインシュタインにノーベル賞を与えることだったと言われています。


キュリー夫人のように、ノーベル物理学賞の後にノーベル化学賞を受賞するということはありますが、制度上、ノーベル物理学賞を一度でも受賞したら、同じ物理学賞を再度、受賞することはありません。


かくして選考委員は、相対性理論の評価という重責から逃げ出すことに成功したわけです。

 


ただし、相対性理論には及ばないというだけで、光量子仮説も十分にノーベル賞に値する素晴らしい業績であるのは間違いありません。


フランスの物理学者、ド・ブロイは、波だと考えられていた光に粒子の性質があったということに衝撃を受け、だったら逆に、粒子とされている電子などの物質も波の性質があるのではないかと考えました。・・・(後略)

 

 

 

世界は「ゆらぎ」でできている

~宇宙、素粒子、人体の本質~(光文社新書)

第1章より




 

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~宇宙、素粒子、人体の本質~

(光文社新書)