コロナで匂いを感じなくなる理由


 一言でいうと… 

✔ ドイツのボン大学は、新型コロナウイルの感染者3分の2が、匂いや味を感じなくなる経験をしているというデータを発表した。

 

✔ ロンドン大学は、熱や咳などの感染症状が出る前に、匂いや味を感じなくなる場合が多く、感染の早期発見に役立つ有力な手段になりうると指摘した。

 

 嗅覚受容体は396種類のセンサーがあり、一つ一つは小さくてデリケートで、ウイルスが感染するとセンサー機能が故障する。

 

✔ 嗅覚受容体に匂い成分が吸着しないと匂いを感じ取れないので、バリアーが薄く設計されており、そのぶん、感染には弱くなっている。

 

✔ 新型コロナウイルスはエアロゾルによる感染の可能性が指摘されているが、嗅覚受容体は食事の風味を感じ取るため、表面はエアロゾルを吸着しやすい化学成分で出来ている。

 

✔ 毎朝、5秒間でいいので、味噌汁とコーヒーで嗅覚のセルフチェックを行うと、早期発見に役立つ。

 

 


 

毎週、水曜日の文化放送「SAKIDORI」と、木曜のFM「ハッピーモーニング」

2020年4月1日と2日にお話した内容から一部を抜粋して、ご紹介しています。

 


志村けんさんが、新型コロナウイルスの肺炎でお亡くなりになりましたね。

 

改めて、怖さを実感した方が多いと思います。

 

 

著名人では、阪神タイガースの藤浪晋太郎選手も感染しました。

 

注目されているのは、藤浪さんが、匂いや味を感じなくなったと証言していることです。

 

 

ドイツのボン大学は大規模な調査を行い、新型コロナウイルの感染者のなんと3分の2が、匂いや味を感じなくなる経験をしているというデータを発表しました。

 

また、今日、ロンドン大学は、熱や咳といった感染の症状が出る前に匂いや味を感じなくなる場合が多いので、

感染の早期発見に役立つ有力な手段になりうるという分析結果を発表したんです。

 

 

匂いを感じるか、セルフチェックって、誰でも簡単に出来ますよね。

 

その方法をご紹介したいと思うんですが、その前に、なぜ、新型コロナウイルスの感染で匂いを感じなくなるのか、理由を知っていただきたいんです。

 

 

実は匂いを感じなくなるのは、インフルエンザや、風邪の原因になるライノウイルスでも、それほど多くはないですが、起きることではあるんです。

 

こちらについては、理由も解明されているんですね。

 

 

匂いを感じ取る嗅覚は、鼻の奥にある嗅覚受容体というセンサーで感じ取っています。

 

味覚のほうは、甘い・苦い・辛い・塩辛い・酸っぱい・それから、うまみの6種類しかないですよね。

 

でも、嗅覚は、なんと396種類のセンサーがあるんです。

 

 

だから、一つ一つは、すごく小さくてデリケートなんですね。

 

だから、そこにウイルスが感染すると、センサーの機能が故障して、匂いを感じ取れなくなるわけですね。

 

 

実は、この嗅覚受容体は、ウイルスに感染しやすい形になっているんです。

 

鼻の粘膜は、ウイルスに感染しないようにバリアーで守られています。

 

でも、嗅覚受容体の場所は、バリアーが薄くなっているんですよ。

 

 

なぜかと言うと、匂いの成分が鼻へ入ってきて、嗅覚受容体にくっついて初めて匂いを感じ取れるわけです。

 

ここを分厚いバリアーで囲っていたら、匂いを感じ取れなくなるでしょ?

 

だから、バリアーは薄く設計してあるんですね。

 

そうなんですね。匂いを感じるためには、どうしても感染には弱くなっちゃうわけですね。

 

 

おそらく、新型コロナウイルスも、同じことが起こっていると考えられているんです。

 

ただ、違う点は、インフルエンザもライノウイルスも、それほど多くの方が匂いを感じなくなることはない。

 

でも、新型コロナウイルスの方が明らかに多いですね。

 

 

また、普通は、重い症状が出てから匂いを感じなくなるのが一般的なんですが、

 

新型コロナウイルスは、重い症状が出る前に匂いを感じなくなることが多い。

 

 

その理由として考えられるのが、感染の仕方の違いなんです。

 

新型コロナウイルスは、インフルエンザなどに比べて、はるかに小さい、エアロゾルと呼ばれる粒子が、

空気中に漂っていて、それ吸い込んで感染する可能性が指摘されているんですね。

 

 

実は、普段、食事のときに、食べ物を口で噛んだ瞬間にエアロゾルが発生しているし、

 

飲み込んだ瞬間にもエアロゾルが発生しているんです。

 

それが喉の奥から鼻の奥に移動して、嗅覚受容体で、食事の風味を感じ取っているわけです。

 

だから、嗅覚受容体の表面は、エアロゾルを吸着しやすい化学成分で出来ているんです。

 

 

ここまでが、医学研究で証明されている事実で、ここから先は、私の個人的な推測なんですが、

 

新型コロナウイルスのエアロゾルを吸い込んだときにも、匂いのエアロゾルと同じように嗅覚受容体に結合して、真っ先に感染してしまう・・・。

 

それが、全身に広がって、本格的に発病するから、匂いを感じなくなるのが先になる・・・。

 

これは、私の単なる推理で、もちろん、実験で証明されたわけではありません。

 

でも、私自身はかなり自信がありますよ。

 

 

それから、味覚がおかしくなるのは、どうしてかということです。

 

インフルエンザに感染し症状が重くなると、舌の表面が荒れて、舌苔がくっついてバリアになるんです。

 

だから、味も感じにくくなるんです。

 

 

でも、新型コロナウイルスの場合は、舌苔ができる前から、味を感じにくくなることが多いんですね。

 

私は、厳密にいうと、味覚ではなく、こちらも嗅覚の問題かもしれないと思いますね。

 

人間は、鼻の奥で感じ取った匂いも含めて、味だと認識しています。

 

だから、鼻をつまむと、味がわかりにくくくなる・・・。

 

以前、「めちゃイケ」というバラエティ番組で、そんなコーナーが人気でしたね。

 

 

ロンドン大学の報告でも指摘されていますが、新型コロナウイルの感染にいち早く気づくために、匂いを感じなくなるというのは、大きなヒントになります。

 

ぜひ、匂いを正しく感じているか、セルフチェックをしていただきたいですね。

 

 

私が特におすすめするのは、毎日飲むものを利用して、匂いの感じ方を覚えておくことですね。

 

たとえば、味噌汁でも、コーヒーでも、毎朝、飲む人は、飲む前に、5秒間でいいので、鼻に意識を集中して、香りを嗅いでみるんです。

 

それで、自分の嗅覚の標準を覚えておくんですよ。

 

そうすると、わずかな嗅覚の低下でも、異変に気づけるわけです。

 

これを、家族全員でやったら、仮に誰かが感染しても、早期に気づいて、家庭内でうつすのを抑えられますね。

 

 

ただし、匂いや味の異常を感じても、それだけで病院に行くのは、現時点ではやめてほしいんです。

 

いずれ基準が変わるかもしれないが、今の日本では、味や匂いの異常だけで、PCR検査を行うことはないんです。

 

つまり、病院に言っても意味がない。

 

感染を広げるだけですね。

 

 

では、どうするべきか?

 

イギリスの耳鼻咽喉科学会では、「7日間の自己隔離」、自主的に自分自身を隔離することを提唱しています。

 

これは、素晴らしい提言だと思います。

 

 

嗅覚が無いことに気が付いたら、熱がないか、倦怠感がないか、咳や息苦しさがないか注意する。

 

そして、念のため、できるだけ家族や他の人の近くにいないように心がけていただきたいですね。

 

 

その上で、2週間がたっても発熱や呼吸器の症状は出ない、でも、嗅覚の異常は、治らないということがあったら、その時点で、耳鼻咽喉科を受診してほしいんです。

 

日本耳鼻咽喉科学会も、2週間という期間が妥当だとしています。

 

 

この場合は、新型コロナウイルスではなく、別の理由で嗅覚の異常が起こっている可能性が高いですね。

 

多いのは、副鼻腔炎なんですね。

 

その場合、2週間待って、それで手遅れになることはないんです。

 

急いで病院に押しかけるのは、感染拡大の原因になるので、今の時期だけは控えてほしいですね。