第7章「鉄をめぐる人体と病原菌との壮絶な闘い」より、抜粋
・・・鉄という元素を中心にして生命を見ていくと、意外な一面が見えてきます。
私たちは普段、ほとんど気にかけることはありませんが、実は地球上で生きている生物の大半が、激しい鉄の奪い合い競争を繰り広げていえるのです。
これは、私たち人間についても例外ではありません。
でも、これは、宇宙規模の視点で考えると不思議なことです。
火星や金星とともに岩石型の惑星として誕生した地球では、鉄はそれほど貴重なものではありません。
だから、初めから鉄が不足しないように人体を設計することは、さほど難しいことではなかったはずです。
地球に最も多い元素はケイ素でも酸素でもなく、実は鉄なのです。
なんと鉄は地球の重量の3分の1を占めており、地球は鉄の塊だと言ってもいいくらいです。
鉄は重いので、その多くは地球の中心部に沈み込んでいますが、私たちの住む地表にも、鉄の元素はそこらじゅうにあり、重量比で5%から6%を鉄が占めています。
人類の文明が鉄を利用することで発展したのも、鉄が容易に手に入る金属だったからです。
そんなにありふれた元素なのですから、不足しないように多目に体内に取り込まれる仕組みを人体に発達させておくことは、進化の上で、さほど困難なことではなかったはずです。
しかし、現実には、人体の進化は、こうした選択をしませんでした。
実は、これによって、多くの方がある悲劇に見舞われることとなったのです。
良かれと思って行った善意が、多くの人命を奪うこととなってしまったのです。・・・
第7章「鉄をめぐる人体と病原菌との壮絶な闘い」より、抜粋
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