第6章「癌細胞 vs.正常細胞 「酸素」をめぐる攻防」より、抜粋
・・・ここまで、地球上で繰り広げられた生命と酸素の40億年に及ぶ歴史を紐解いてきました。
酸素は生命に対して高いエネルギーをもたらしてくれるという大きなメリットがある一方で、もともとは細胞にとって毒だったため害も及ぼすという光と影の両面があるというのは、ご理解いただけたと思います。
実は、人類の脅威となっている癌という病気も、酸素がもたらした影の側面の一つだといえるのです。
癌とは、ひと言でいうと、細胞が無限に増殖してコントロールがきかなくなってしまう病気です。
つまり、多細胞生物としての失敗が癌の本質なのです。
先ほど説明したように、生命は酸素を利用して大きなエネルギーを利用できるようになったからこそ多細胞生物に進化できました。
これは地球上で繁栄する上で画期的な進歩だったわけですが、同時に、多細胞で生きていく仕組みがうまくいかなくなる癌という病気の火種を抱え込んでしまうことにもなったのです。
生命は、酸素が生み出す膨大なエネルギーを利用して、細胞と細胞を結びつけるコラーゲンを作り上げました。
ただし、これだけでは、単に多くの細胞が集まって団子のようになるだけで、高度な機能を発揮することはできません。
実は、この状態が癌そのものだということが、最新の研究で明らかになってきたのです。
つまり癌は、大気に酸素が含まれないという岩石型惑星として誕生した地球の宿命だといえるわけです。
これについて、身近な例をあげながら具体的に説明していきましょう・・・
第6章「癌細胞 vs.正常細胞 「酸素」をめぐる攻防」より、抜粋
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