周期表から宇宙を読み解く
周期表を上手に使えば、宇宙への理解が飛躍的に高まる・・・。
この章であなたにお伝えしたいのは、この一言に尽きます。
宇宙と周期表なんて、まったく関係のないものだという先入観をお持ちだと思いますが、これは縦割りの学校教育がもたらした弊害です。
周期表を元に宇宙を構成している元素という観点で見つめなおすと、見落としていた本質が垣間見えてきます。
さらに、宇宙の摂理は周期表のそこかしこに現れており、私は周期表そのものが宇宙を表現したものだとも感じています。
壮大な宇宙のロマンに、周期表から迫っていきましょう。
地球では元素は生まれない
私たちをとりまく元素は、どこで生まれていると思いますか。
実は、一部の例外をのぞき、天然の元素は地球上ではつくられません。
人体を構成している元素は、ほぼすべてが宇宙に由来しており、その種類と割合から、宇宙の成り立ちをも知ることができます。
元素を誕生させるには、決定的に重要な条件がひとつあります。
それは、温度が1000万度を超えることです。
新しい元素を生み出すには、元の元素の原子核と原子核を、お互いに核力が働く距離まで接近させる必要があります。
しかし、原子核と原子核とは電気的に反発し合っているので、接近させるには、それを超える膨大なエネルギーが必要です。
それが、1000万度という途方もない高温状態というわけです。
もちろん地球上には、基本的には1000万度を超える場所などありません。
地表は当然ですが、地中深くに存在しているマグマでもたかだか1000度程度。
1000万度と比べれば話にならないほど低温です。
そのため、地球では新しい元素はつくられないのです。
1000万度の高温となる3つのケース
では、宇宙のいったいどこで1000万度を超える高温になっているのでしょうか。
そのきっかけは、大きく分けて次の3つのケースがあります。
① 宇宙自体が誕生した「ビッグバン」の直後
宇宙は137億年前に、ビッグバンという大爆発によって誕生しました。
何といってもこの宇宙を創り上げた爆発なので、爆発直後は1000万度をゆうに越えていました。
たとえば、ビッグバン1秒後の温度は、ケタ違いの100億度だと推計されています。
② 太陽のような恒星の中で起こる「核融合」
恒星の内部の温度は1000万度を越えており、次々と新しい元素が生み出されています。
もちろん、私たちにとって最も身近な恒星である太陽も例外ではありません。
太陽の中心部の温度は、1500万度もあり、これにより水素の原子核同士が融合し、新たにヘリウムが生み出されているのです。
といっても、太陽のどこでも核融合が起こるというわけではありません。
太陽の表面は燃えたぎっているように見えますが、温度は5500度と低く、新たな元素は生み出されません。
核融合を起こす1000万度がいかにすごいことかよくわかります。
③ 寿命が尽きた恒星の「超新星爆発」
超新星爆発とは、太陽の10倍以上ある恒星が寿命を終えるときに、大規模な爆発を起こすという現象です。
実は、宇宙に存在している鉄より重い元素は、ほとんどが超新星爆発のはじめの10秒でつくられたものだと考えられています。
この3つのケースについて、それぞれ詳しく見てみましょう。・・・・
「元素周期表で世界はすべて読み解ける」(光文社新書)第2章より
元素周期表で世界はすべて読み解ける
宇宙、地球、人体の成り立ち
吉田たかよし著
2012年10月17日発売
光文社新書/定価777円
【目次】
第1章 周期表には何が書かれているか?
第2章 周期表から宇宙を読み解く
第3章 化学反応を繰り返す人体
第4章 私たちはなぜ、動くことができるのか
第5章 レアアアースははみ出し組ではない!
第6章 美しき気ガスと気体の世界
第7章 周期表からリスクと健康を見きわめる
元素周期表で学ぼう!楽しもう!