一言でいうと…
✔ 使い捨てのマスクを再利用することは、緊急避難的な処置としてなら、安全対策を施せば可能だ。
✔ 新型コロナウイルスもインフルエンザも、マスクを普通に洗濯しただけで感染力はなくなるが、ノロウイルスの感染力はなくならない。
✔塩素系の漂白剤を使えば感染力はなくなるが、漂白剤が残留すると顔がただれる。
✔ 使い捨てマスクの場合、沸騰したお湯に浸けて、5分間、煮沸消毒すれば、感染力は完全になくなる。
✔ 使い捨てマスクの不織布は、洗濯を煮沸消毒で繊維が劣化するが、5μmの飛沫がギリギリ通る程度で、一定の予防効果は期待できる。
毎週、水曜日の文化放送「SAKIDORI」と、木曜のFM「ハッピーモーニング」
2020年2月12日と13日にお話した内容から一部を抜粋して、ご紹介しています。
新型コロナウイルスの影響で、今、ドラッグストアからマスクが消えているところが多いですね。
このところ、患者さんから「使い捨てマスクを再利用できないものか?」とよく聴かれるんです。
大原則として、健康にかかわるものを、本来とは異なる使い方をするのがダメなのは当然ですね。
とはいえ、現状、手に入らないなら、どうしようもないですね。
先週、この番組でお話したように、マスクを漫然と着けているだけなら、感染率は下がりません。
でも、飛んでくる飛沫を吸い込むのを、マスクでブロックする効果は、確実にあります。
やっぱり、満員電車みたいに、人間が密集している場所では、やっぱりマスクはつけた方がいいですね。
私は、緊急避難処置としてなら、一定の安全対策をすることで、再利用が可能と考えています。
もちろん、マスクが流通するようになっても、節約のため、再利用を続けるというのはダメですよ。
使い捨てのマスクは、不織布(ふしょくふ)というシートで出来たものが大半です。
患者さんに、洗濯ネットに入れて洗濯したマスクを見せてもらいました。
3回も再利用しているものですが、少しクシャっとした感じですけど、見た目は新品とそんなに変わらない。
けっこう、驚きました。
肝心の感染については、新型コロナウイルスもインフルエンザも、普通に洗濯したら感染力は完全に無くなります。
ただし、ノロウイルスは洗濯だけでは感染力は無くならないんですね。
感染力を完全に無くすには、塩素系の漂白剤に漬けておく方法もあるが、漂白剤が少しでも残れば、顔がカブれます。
そこで、おすすめは、煮沸消毒です。
使い捨てマスクなら、沸騰したお湯で5分間、グツグツ煮れば、感染力は完全に消滅します。
では、マスクの繊維自体はだいじょうぶなのか?
私は、感染症の診断で使う顕微鏡で観察してみたんです。
洗濯して、さらに煮沸消毒したマスクは、繊維が少し壊れて毛羽立っていました。
空気の通り道の穴が、少し大きくなっている箇所が、ところどころにありましたね。
感染を起こす飛沫は、大きさが様々です。
最も小さいもので5マイクロm、1ミリの200分の1なんですが、これならギリギリ通るかなという感じでした。
すごく運が悪ければ、シャットアウトできないくらいです。
再利用したマスクであっても、少なくとも着けないよりは、着けた方が、ウイルスは、はるかに遮断できると私は判断しました。
※ただし、マスクを再利用するときに、大きな落とし穴があるんです。
うちの患者さんもそうだったし、マスクを再利用しない人も、やってしまっている人が多いと思います。
みなさん、マスクを外した後に、汚染された外側を内側に折りたたんでポケットに入れていませんか?
これで、汚染が広がらないからセーフと思っている人もいますが、これは、アウトです。
ウイルスは甘くないですよ。
実は、飛沫が直接マスクの繊維に吸着すると、けっこう密着します。
でも、マスクを使っていると、表面に目に見えない小さなホコリが無数に付着して、そのホコリにウイルスが付着しちゃうんです。
ホコリって、ちょっと叩いただけで、フワフワっと広がりますよね。
ほこりと一緒に、ウイルスが散らばって、感染を広げてしまうわけです。
先週、マスクをしたら逆に感染率が0.4%高くなった実験結果を紹介しましたよね。
その原因も、マスクを外したあとにウイルスを家庭の中に拡散させたのが大きな要因だと指摘されているんです。
正しい方法は、ビニール袋を持ち歩いて、マスクを外すときに、マスクの耳当てのところだけを持って、ビニール袋にそうっと入れて封印するんです。
再利用する人もしない人も、ビニール袋ごと持ち帰るようにしてほしいです!