世界は「ゆらぎ」でできている
~宇宙、素粒子、人体の本質~
(光文社新書)
世界は「ゆらぎ」でできている
~宇宙、素粒子、人体の本質~(光文社新書)
「おわりに」より
私は、モーツアルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークという曲が大のお気に入りです。
仕事が立て込んで疲れきってしまったときは、紅茶を飲みながらこの曲を聞くというのが私の日課となっているのですが、そのたびに感じることがあります。
それは、揺らぎの本当の価値は調和にあるということです。
モーツアルトの曲は、規則性と不規則性が絶妙なバランスで揺らいでいるのが特徴です。
この揺らぎが生み出す調和が、聞く人を何ともいえぬ心地良い気分にさせてくれるのです。
本書では、量子論の揺らぎから始まり、素粒子や宇宙、それに人体や心といった様々な分野のサイエンスについて、揺らぎをキーワードに解説してきました。
いずれの分野も、モーツアルトの曲と同じように、揺らぎは秩序を壊すものではなく、むしろ調和を築き上げているものだということがお分かりいただけたと思います。
原子は他の原子とともに調和を保ちながら揺らぐからこそ、多様な化学反応を起こします。
素粒子も、ひもが調和を保ちながら揺らぐからこそ物質を形作ります。
宇宙は量子の揺らぎが調和を持ったからこそ、豊かな銀河や銀河団を形成しました。
人体も心も、調和を持って揺らぐからこそ、変わりゆく環境に柔軟に適応できるのです。
実は、本書を執筆するにあたり、私は隠れたテーマを設定していました。
それはサイエンス全体が、それ自体で揺らぎを持った調和をなしているということを、この一冊の本で示すことです。
宇宙も素粒子も人体も、最先端のサイエンスが描き出す姿は、それぞれ実にバラエティに富んでいます。
しかし、サイエンスの全体を俯瞰して眺めると、私の目には各分野の研究が大きな揺らぎを示しているように見えてくるのです。
しかも、それらは勝手気ままに揺らいでいるのではなく、サイエンス全体の調和を見事に築き上げているように感じられます。
情緒的すぎるという批判を覚悟の上でいわせていただくと、揺らぎと調和が織りなすサイエンスの世界観は、モーツアルトの曲と本質は同じだと思うのです。
実は、当初、本3冊分くらいの膨大な原稿を書いてしまい、その中から光文社の編集長と担当の三野知里さんに面白い部分を厳選していただき、本書が完成しました。
おかげで自信を持って世に送り出せる本になり、お二人に感謝しています。
また、やはりこのお二人にお世話になり、去年は「元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙・地球・人体の成り立ち」(光文社新書)を出版し、多くの読者の方から大きな反響をいただきました。
こちらも併せてお読みいただくと、宇宙や人体への理解がさらに立体的なものになると思います。
サイエンスは、研究者や医者を除けば、知らなければ生活に支障をきたすというものではないでしょう。
また、難しいものだという先入観もつきまといます。
しかし、スポットライトを上手にあてさえすれば、感動的な物語りと同じように私たちにワクワクする感動を与えてくれるものです。
本書によってあなたが、ほんのひと時でもサイエンスって楽しいなと感じていただけたら、著者としてこれ以上の喜びはありません。
東京理科大学客員教授
吉田たかよし
世界は「ゆらぎ」でできている
~宇宙、素粒子、人体の本質~(光文社新書)
「おわりに」より
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