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「優しかった彼女をなぜ鬼嫁に感じるか」

脳科学で正す「不合理」な思考 (角川新書oneテーマ)

 

はじめに

  

不合理な判断を招く「ヒューリスティック」の罠!

 

不合理な認識不合理な判断不合理な行動…。

私たちの毎日は、朝から夜まで不合理なことだらけです。

 

胸に手を当てて、思い起こしてください。

あなたは、次のようなことに関して身に覚えはありませんか。

 

・つきあっているときは優しいと思っていた彼女が、結婚して10年たったら鬼嫁に変身してしまった…。

 

当せんする確率はものすごく低いと頭では分かっているのに、宝くじの一等がひょっとしたら当たるかもしれないような気がしてくる…。

 

・50万円のネックレスの後に9万円のネックレスを見せられたら、何だか高くはない気がして、ついつい買ってしまった…。

 

この三つの例は、いずれも不合理な判断によるものです。

それぞれはまったく無関係に思えますが、実は、これらはすべて「ヒューリスティック」と呼ばれる現象で説明がつくのです。

 

ヒューリスティック」とは直感的な判断を意味する認知心理学の用語で、今、幅広い分野で注目を集めています。

2002年には、プリンストン大学ダニエル・カーネマン教授が「ヒューリスティック」を応用した理論でノーベル賞に輝いています。

 



 

人間の脳は、とことんまで合理的に設計されている!

 

「人間なんて不合理なものだから、仕方がない」

あなたは、不合理な判断や行動をこんな一言で片づけていませんか。

 

私は断言します。

その認識は、まったく間違いです。

そもそも人間の脳は、どこまでも合理的に出来ているのです。

そうでなければ、体力的に劣る人間なんて、厳しい進化の競争の中で、とっくに地球上から姿を消していたはずです。

 

では、本来は合理的にできているはずの私たちの脳が、どうして不合理な判断や行動をしてしまうのでしょうか。

実は、そこには奥の深いロジックが隠されていたのです。

それを脳科学や医学で解き明かすのが、本書の目的です。

 


 

ただし、人間の不合理を解釈するだけでは、実用的には何の役にも立ちません。

人生をしっかりと生き抜いていくには、不合理な判断や行動を乗り越えられる確かな処方箋が必要です。

 

本書では、こうした方法論についても分かりやすく説明しています。

 

・せっかく理想的な受験勉強の計画を立てたのに、三日坊主どころか、たった一日で投げ出してしまった…。

 

・スレンダーな体形を維持したいとダイエットを始めたのに、気が付いたら夜中にポテトチップスを3袋も食べてしまっていた…。

 

仕事で失敗したあと、気分を切り替えた方がいいと頭では分かっているのに、ついつい引きずってしまって、失敗を繰り返していた…。

 

これらはすべて、かつての私がどうしても止められなかった不合理な行動です。

しかし、今では完全に克服することができました。

 

医学脳科学、それに認知心理学行動経済学…。

こうした最先端の科学を動員して適切な方法論で臨めば、ありとあらゆる不合理な行動がものの見事に回避できるようになったのです。

 



 

人間の不合理は遺伝子のミスマッチがもたらした!

 

さらに私は考えました。

長年、私を悩ませ続けてきた人間の様々な不合理には、きっと何か大きな背景が隠れているはずだとひらめいたのです。

 

この直感は、当たっていました。

不合理な行動や判断を突き詰めていくと、一見、バラバラに見える人間の多様な非合理性の奥底に、共通した一本の背骨が垣間見えてくるのです。

それは、原始時代と現代社会との環境のギャップでした。

 

人間の遺伝子は、基本的には、原始時代の環境を前提に進化を遂げたものです。

ところが、文明を手にした人類は、原始時代とはまったくかけ離れた現代社会の環境を築き上げました。

このダイナミックな変化に、私たちの遺伝子は、まだ十分に適応できていません

このミスマッチが、結果として不合理な行動や判断をもたらしてしまうのです。

 

私たちが不合理な行動と完全に決別するには、こうした人間の不合理が抱えるダイナミズムを理解することが不可欠です。

その上で、合理的に生きていくための個々の方法論を実践すれば、盤石だといえるのです。

 



 

不合理な自分と決別して思い描く人生を歩もう!

 

こうした考え方をもとにして、本書では、人間の抱えるありとあらゆる不合理科学のメスを入れ、どなたでも簡単に実践できる克服法を解説しています。

 

まず、第1章では、「勉強を続けたいのに投げ出してしまう」、「ダイエットを続けたいのに挫折してしまう」といった行動面での不合理を取り上げます。

これに対し、最新の医学や脳科学の研究成果を応用して、一つ一つの不合理な行動に対して処方箋を示しています。

 

次に、第2章では、「ヒューリスティック」をクローズアップし、直感的な認識や判断における不合理を分析します。

また、認知心理学行動経済学の面から対処の方法を探ります。

優しかった彼女をなぜ鬼嫁と感じるのかについても、この章で明らかになります

 

さらに、第3章では不合理な判断とストレスとの関係について分析します。

うつ病の研究などから、人間の脳はストレスにさらされると不合理な判断に偏ってしまうことが明らかになっています。

こうした医学研究の成果を踏まえ、プレッシャ―のかかる大切な仕事や受験にどう立ち向かっていったらいいのか解説します。

 

 

人間は、本来、とことんまで合理的に設計されている存在のはずです。

もし、あなたが不合理な行動を繰り返しているとしたら、それは環境のミスマッチがもたらした仮初めの姿に過ぎません。

本当のあなた自身の姿とはいえないのです。

 

ぜひ、そんな不合理なご自身とキッパリと決別し、今日から、あなたの思い描く人生を歩んでいただきたいと思います。

本書はそのための一助になると確信しています。

 

 

      東京理科大学客員教授 医学博士 吉田たかよし